太陽光発電所は 1,000万円以上もする大きな買い物です。家が建つくらいの値段です。
徳島県の業者で「ほったらかしで副収入」や「クリーンエネルギー環境貢献」などのキャッチフレーズを鵜呑みにしてはいけません。
業者の提示するシミュレーションが本当に正確かを検証する必要があります。下振れする場合は,事業計画が大きく狂いサラリーマンからの貴重な給料からの持ち出しが多く発生します。
当然,夫婦関係も悪くなります。経済的な問題はそれほど根が深いです。
精神的にも,経済的にも,時間的にもかなりしんどいです。
業者の中には表面利回りが 10 %に見せかけて発電所を販売し,契約したら「リスクを承知で契約したでしょう。」と言われます。
本日は,一人でも多くの発電事業者が実利と環境の両面でよりよい事業が行えるように「太陽光のシミュレーション」について記事を書きます。
太陽光発電の発電量のシミュレーションについて
太陽光発電のシュミレーションは天候,気温,影,パネルのレイアウトさまざまなパラメーターがあり正確に算出することは難しい。あくまでも「目安」と捉えてください。簡易的なシミュレーションと正確なシミュレーションについて説明します。
簡易的なシミュレーション
まずはざっくりと年間発電量を推定する方法をお伝えします。
( 年間発電量 kWh )= ( パネル容量 ) ×1,000
とても分かりやすい公式ですね!!
例えば,100 kWの発電所であれば,
年間発電量は 100×1,000=100,000 kWh となります。
もちろん九州地方や四国地方など日当たりのよいところは,パネル容量の1,000~1,100以上の発電量になります。一方で,山陰や北陸など積雪地帯では 950 となるかもしれません。
太陽光の会合では,長野県などの日射量の高い地域では,1500以上も出たということも聞きました。
あくまでも目安と捉えて下さい!!
正確なシミュレーション
太陽光の発電シュミレーションは数多くのパラメーターがありますので,正確無比に値を出すことは容易ではありません。
業者は有償のソーラー・プロのソフトを使用して,ある程度厳密にシミュレーションを計算することができます。
業者やメーカーが算出したシミュレーションを鵜呑みにしてはいけません。
私たち事業者もシミュレーションの根拠を学んでいきましょう。
それでは年間発電量のシミュレーションの式を記述します。
(年間発電量)=(観測地点の平均日射量)×365×(パネル容量)×(損失係数)
365は1年ですね。(うるう年の366もありますが。。)
パネル容量も見積り書から明らかです。
シミュレーションの計算に大きく影響を及ぼすのが,
( 観測地点の平均日射量 )と ( 損失係数 ) です。
以下で,順番に説明します。
観測地点の平均日射量
観測地点の平均日射量を求めます。
NEDO を活用
日射量データベース閲覧システムを使用します。
国内837地点,過去20年間の日射量のデータベースが掲載されています。
購入を検討している発電所の見積もりを手元に用意してください。
今回は,私の発電所の住所または座標を入力します。
MONOSOLA-20を使用します。
パネルの傾斜角,方位角,土地の勾配
見積書記載のパネルの傾斜角を決定します。
同様に,方位角(※真南が0°)も決定します。
斜面の発電所であれば,水平面の角度(土地の勾配)も探す。
基本的な水平な土地に,真南,傾斜角30°が一番発電量が多くなります。だからといって,パネルの角度を大きくすると離隔を大きくとらないといけません。限られた土地の広さで発電量を最大にするレイアウトはパネル確度が10°~20°の発電所が多いです。
平均年間日射量を推定
年平均日射量の数値が大切です。上の例では,4.28です。
私の感覚では4.0以上を超えると,とても日射量の高い地域です。
※大切なことは観測地点と発電所の住所は異なります。
発電所に一番近い観測地点の値であり,あくまで目安として下さい。
安全なのは発電所近隣の3か所を調べて平均値をとれば安心ですね!!
業者によっては,最も日射量の高い年のデータを使いますので注意が必要です。
日射量の算出のまとめ
年間の平均日射量を自分で推定する方法をもう一度まとめます。
☑ 発電所に近いNEDOの観測地点を選ぶ。
☑ 水平面,方位角,傾斜角を選ぶ。
☑ 平均日射量を特定する。
損失係数について
続いては,損失係数です。
損失係数とは,太陽光パネルの種類,パワコンの変化で生ずるロス,温度抑制等,出力の損失を見込んで掛ける数値のことです。NEDOによる損失係数は0.73としています。この損失係数をかけることで,理論上ではなく実際上の発電量を計算することができます。
損失係数とは
この損失係数が 0.86 や 0.85 といった現実ではあり得ない数値を使用してシミュレーションを作成して,販売する業者がいます。
会社名は伏せますが,上場企業や大手の販売業者もいます。
⇒その結果毎年,想定した収益を上げることができず苦しむ発電事業者がいます。
(私もその一人です。)
契約したのはあなただからあなたの責任でしょう。で済ましていいのでしょうか??
ここでは私が勉強した損失係数に大きな影響を影響をもつものを紹介します。
パワーコンディショナー変換効率
太陽光で作られたすべての直流電力をパワコンで交流に変換できるわけではありません。
パワーコンデショナーの変換効率は太陽光パネルで作られた直流電流を交流に変換する際の変換できる割合を表します。
以前のパワコンの変換効率は93%程度でしたが,最近のそれは97%のものもあります。とても性能が上がってきていますね。
見積書に記載のパワコンの変換効率を見てみてください。
過積載によるピークカット
過積載とはパワーコンデショナーの容量に対して,パネル容量を多く設置する手法です。パネル価格が下がったころに一般的になりました。曇りの日や日射量の低い冬でも安定した発電量を確保することができます。一方,快晴のときは太陽光パネルで発電した電気をすべてパワコンで変換できないので,発電した電力は捨てることになります。これを見込んだ損失をピークカットといいます。
( 過積載率 )= ( パネル容量 ) /(パワコン容量)×100
例えば,パネル容量が99 kW, パワコン容量が49.5 kWの発電所の場合,
過積載率は 99÷49.5×100=200% となります。
過積載率によるピークカットはおおよそ上記ようになります。
経験上の話をすると
このピークカット率を損失係数に加味していない業者がとても多いです。
温度上昇抑制
太陽光パネルは高温になると発電効率が落ちます。
真夏よりも,春や秋の発電量がいいのはそのためです。
温度上昇抑制は次の式で表されます。※0.42 は結晶系のパネルの係数です。
Kpt = 1ー0.42×{ (年平均気温)+(月平均気温)ー25 }
この式から分かることは平均気温と月平均気温が25°を超えると,温度上昇抑制に関する損失係数が 1 を切ってしまいます。
気温が高い地域よりも涼しい地域のほうが発電量は多くなります。
ケーブルの太さ,汚れ等
ケーブルの動線が太くて短いとロスなく引き込み線まで電気を運ぶことができます。丁寧な業者は引き込み線の北側に全てパワコンを設定して損失を少しでも少なくしてくれるところもあります‼︎
R= ρ× ℓ/S
ケーブルの断面積を S ,ケーブルの長さを ℓ ,電気抵抗をR,材質を ρ
表されます。
抵抗が大きいところに,電流が流れると電圧が下がります。
電圧が下がると次に説明する電圧抑制という売電できないという大変なことがおこります。
電圧抑制
電圧は水の流れのように高いところから低いところを流れます。
引き込み点の電圧が売電の電圧よりも高いと電気が流れなくなります。これが頻繁に起こると,事業計画が大きく狂います。
平日や夏,冬は工場や学校等が電気を多く使用するので,電線の電圧が下がるので電圧抑制は起こりにくいですが,休日や秋,春など電力需要が少ないと電線の電圧が高くなり売電できなくなります。
対策として,電力会社にパワコンの整定値を上げてもらうことです。
ただし,電力開始も電力を守る観点から多少の電圧抑制ではなかなか対応してもらせん。私は何度も交渉を重ねて,エビデンスも提示してようやくパワコンの整定値を216V⇒218Vに上げてもらいました。
その他の損失やリスク
その他にもさまざまな損失があります。
経年劣化
まずはパネルの経年劣化による出力低下。パネルは半永久的に使用できますが,経年劣化による出力は無視できません。
太陽光パネルの汚れ
パネルはどうしても塩害,黄砂,鳥の糞などで汚れることで出力は低下します。定期的に現地を目視することが大切です。
アレイの回路補正
太陽光パネルを直列,並列さまざまなに並べることでアレイ出力は太陽光モジュールよりの出力の総和よりも小さくなります。
以上のすべての損失係数を加味すると,やはりNEDOの推奨値0.7~0.75が実情の値ではないでしょうか。
損失係数が0.8以上の業者はシミュレーション下振れの可能性が高いです。
また施工前にしっかりと調査しても,連系後は制度改正のリスクや天災リスク等も十分考えられます。
FIT制度のリスク等を記載しています。合わせて読んでみてください!!
現場確認で見る視点を3つ
最後に現場調査の時に,見てほしい視点を3つ紹介します。
土地の地盤
太陽光の土地は農地や遊休地が多いです。よほど時間がない場合を除いて現場確認は必須です。特に元田んぼである場合は地盤が固いかどうかがとても大切です。
太陽光発電事業は20年以上にわたる売電事業です。
地盤が弱くては途中で地盤沈下が起きて,パネルがうねってしまします。
これは私の発電所です。
なんと,系統連系してわずか1年でパネルがうねっています( ;∀;)
すぐに処置をしなければ,最悪パネルが割れてしまいます!!
徳島に住んでいる友人が教えてくれました。本当に感謝です。
周りの雰囲気や地域住民
その土地の地域の人々が太陽光発電事業に協力的かどうかは非常に大切です。
直接地域の人に話す機会は持てないでしょうから,業者さんの反応だったり,知人が近くで発電所を持っていればようすを聞いたりしましょう。
私たちにできることは,ゴースト発電所にならないように維持・管理をしっかして少しずつ地域住民に信頼して頂くことです。
太陽の軌道の確認
影の影響がどのくらいあるかを徹底的に見る必要があります。
盲点なのは近くに建物よりも遠くの山です。
サン・ササベーヤーというアプリで太陽の軌道が確認できます!!とても便利です。有料アプリですがすぐに元はとれますよ。
特に夏場は東北東(60°)から太陽光が上り,私たちの真上(南中高度)を通り,西北西(300°)に沈みます。日照時間は15時間以上もなります。
是非とも現地でアプリを活用してみてください。
☑ 夏至 90-緯度+23.4
☑ 春分,秋分の日 90ー緯度
☑ 冬至 90-緯度-23.4
23.4°は何の数字なの??
地軸が公転面に対して,23.4°傾いているからです。中学3年生で学習した理科の知識が太陽光発電事業にとても役に立ちます‼︎
ちなみに日本の北緯はおよそ35° です。
太陽光パネルの発電量が最大になるのは,太陽光線とパネルが垂直にあたるときです。
冬場は高度が低いので,パネルの角度は大きく,夏場は高度が高いので,パネル角度が緩やかにすれば発電効率は最もよいです。
(パネルの最適角度)=(発電所の緯度)
NEDOではパネル角度ごとの日射量データがあります。私の理想のパネル角度は20°です。
ただし,パネル角度が大きいとデメリットも存在します。
離隔を大きくするので広い土地が必要だったり、強風でパネルが破損する可能性も高くなります。
メリット・デメリットを考えて最適なパネル角度を決めてください。
最後に私が作成したシミュレーションシートを公開します。
参考のひとつにしてもらえれば幸いです。
私が作成したシミュレーションシートの公開
NEDOの日射量,温度抑制,パワコン変換効率,ピークカット等すべてを加味して作成してシミュレーションシートを公開します。
さまざまなブログ,書籍,日本電機工業会の答申等を参考にして作成したものです。
日射量はNEDOのデータから水平角,パネルの傾斜角,方位角を選んで決めてください。
パネル角度は10°刻みになっており,15°の場合は10°または20°で選んでください。
パワコン変換効率は見積もりのパワコンに記載がありますので入力してください。
ピークカット率は日射量が高い地域や夏場等は大きく見積もり,冬場は少なくなります。あくまでも1年を通しての平均となります。
観測地点の平均気温は気象庁のホームページで確認してください。
☑ 最も近い観測地点のNEDOのデータを入力
☑ 平均気温は気象庁HP
☑ 過積載率からピークカット率の表を参考に
☑ 見積もり書のパワコン変換効率を入力
このシミュレーションシートの活用が一人でも多くの太陽光発電事業を志す仲間が幸せになってほしいという願いを込めて。
さらに,みなさんが少しでも気持ちよく太陽光発電事業をしてほしいということで私の体験談を書きました!!
参考文献
株,不動産,節税など暮らしに役立つことが掲載されています。