太陽光発電所のサイトを見ても,2022年~新築太陽光発電所の物件が激減しています。
肌感覚として,平均利回りも8~9%台数年前から2%程度下がってします。
どうして新築の太陽光発電所が減ってきたの??
新築の太陽光は2019年度の低圧(出力50kw未満)全量買い取りを最後に案件がなくなってしまいました。
2020年度からは全量買い取りは高圧 (50kw) だけとなります。
それに加えて
低圧発電所は設備認定日より3年以内に系統連系を行わなければ,FIT期間が20年間から減らされてしまいます。
その結果
最近では中古の太陽光の売買が盛んになってきました。私も,業者から発電所をさせて下さい。売って下さいと頻繁に DM を頂きます。
中古太陽光の売買は黎明期ですが,ここ2~3年で市場規模が多くなってきます。不動産のように仲介の手数料の規定等は定められていませんが,3%程度が多いようです。
本日はこれから盛んになるであろう,中古太陽光発電所(セカンダリー)のメリット・デメリットを検証します。
中古太陽光が市場に出る理由
中古の太陽光発電所が増えてきた理由を考えます。
税制面の優遇
固定価格買取制度 ( FIT制度 ) は2011年~始まりました。
当時の買取価格は 1 kw あたり 40円(税抜き)です。とてもプレミアムな価格です。
当時は税金の一括償却などさまざまな優遇が行われていました。償却の終わった資産を持ち続けるよりも,それを売却して新たな資産を購入したほうが税金的にも有利です。
資産の組み換えで売りに出すことも多くなります。
課税事業者⇒免税事業者
太陽光発電は平均して2,000万円以上もする高価なものです。消費税の取り扱いが大きく事業に影響します。
開業1年目に課税事業者になります。(課税事業者選択届出書)
課税事業者1年目で太陽光を仕入れて,来年に消費税の還付を行います。
2年~3年目は売電収入の消費税を納付します。
4年目に免税事業者に戻ります。
このときに太陽光発電所を売却すれば,売却に係る消費税を納付義務がなくなります。
税法上認められた,最強のスキームです!!
もう一度流れをまとめます。
✅ 1年目あえて課税事業者になる(課税事業者選択届出書)
✅ 消費税還付を受ける。
✅ 2,3年目は消費税を納める。(課税事業者選択不適用届)
✅ 4年目は免税事業者に戻る。
短期譲渡所得⇒長期譲渡所得
資産の売却は譲渡所得の対象になります。
太陽光発電所の売却も課税対象です。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
年数 | 5年以下 | 5年以上 |
所得税 | 30% | 15% |
復興税 | 0.63% | 0.315% |
住民税 | 9% | 5% |
総合課税 | そのまま | 2分の1 |
上記のように5年以上所有して,売却すると税制面でもとても有利になります。
償却も終わり,消費税還付も受け,残債も減り,譲渡所得も優遇される。
購入から売却までプラス(+)で事業を見通せます。
中古太陽光のメリット4選
新設の発電所と比較して,中古の太陽光発電所のメリットを紹介します。
売電実績が明確
これが最も大きなメリットですね。
新築の太陽光発電所のシミュレーションはどんなに正確に出してもあくまでもシミュレーションです。
シミュレーションは気象条件や温度,影の影響,電圧抑制,その他の損失等非常におおくのパラメーターから構成されます。また,業者の提示するシミュレーションよりも下振れする可能性が多いです。売り手も商売ですから1円でも高く売りたいので当然です。
それに比べて中古の太陽光発電所は電力会社からの売電明細を見れば,実績が明らかです。
買い手だけでなく,融資をする銀行等も安心材料です。
繰り返しますが,売電実績が明確 がセカンダリーのメリットです。
税金等が明確である
太陽光発電所の維持には意外と多くの税金がかかります。
設備の償却資産税,土地の固定資産税,電力負担金,不動産取得税等々あります。
意外と盲点は土地の固定資産税です。
太陽光発電所は地目を農地から雑種地に変更するので,固定資産税がとても高くなります。
特に土地の固定資産税が年間10万円以上必要になると,利回りに大きく影響します。
中古の太陽光発電所はこの固定資産税の額が明確なので,メリットの一つです。
入金サイクルが早い
新築の太陽光発電は,契約,着工,地目変更,系統連系まで数か月から1年以上必要になります。
連系して検針日をまたいで入金するまでは,1円も売り上げはありません。
私の体験でいえば,2021年10月の完工~2022年4月まで半年以上も必要になりました。
詳しくいうと,地権者さんが電柱設置の折り合いがつかず電線までのルート確保が難航しました。あいにく据え置き期間を長めに設定していたので,なんとか持ちこたえることができました。元金の返済がもし始まっていたら,毎月何十万の支払いは不可能です。
とても精神的にこたえました( ;∀;)
中古の太陽光発電所であれば,契約から入金まで1か月で可能なので,資金繰りのリスクを最小限に抑えられます。
償却期間が早い
その他は,新築に比べて利回りも総じて高かったり,中古なので減価償却を高く計上できます。(経営者は4年落ちのベンツを買えと言われますね。)
中古太陽光発電所の減価償却の計算は次の式です。
✅ (17 ー 稼働年数) + ( 稼働年数×0.2 )
※小数点は切り捨て
例えば,稼働から10年経過した発電所の耐用年数は
(17-10)+10×0.2=9年 で減価償却できます。
本業で黒字が出たときは,太陽光発電所で経費計上して,利益を圧縮することができます!!
☑ シミュレーションが明確
☑ 税金等が明確
☑ 資金繰りのリスクが低い
☑ 減価償却の利用
中古太陽光のデメリット
メリットがあればデメリットもあります。ここでは主なデメリットを紹介します。
FIT 期間が短い
新築太陽光はFIT 期間が20年間あります。
これは電力会社が20年間電気を買い取ってくれます。いわば空室リスクのない不動産投資です。FIT 期間は 連系を開始した日から短くなります。
例えば,連系開始から2年5か月経過した場合は,残りFIT 期間は 17年7か月です。
20年後も電気が売れないことはないですが,買取価格は不明です。
長期的な総収入で見ると,新築に比べて少なくなります。
パネル・パワコンが古い
ここ数年で太陽光パネルやパワコンの性能はどんどん上がっています。
太陽光パネルは高品質でワット数や発電効率が高くなっています。
パワコンは変換効率が93%⇒97%まで上昇しています。
中古の太陽光は売電単価は高いですが,旧モデルのパネルやパワコンを使用しています。新築に比べて,発電効率が落ちたり故障のリスクは多くなります。
また,生産停止の部品等もありますので,どんな製品のパネル,パワコンを使っているか,保証はどうなっているかしっかりと検討してください。
改正FIT法に未対応
FIT が始まって制度改正が頻繁に行われてきました。
背景としては発電所の建設に集中して,メンテナンスを一切行わずに,野放し状態のものが多くなってきたからです。
太陽光発電所はメンテナンスフリーではありません。
2017年以前は,フェンスや看板設置の義務はありませんでした。今は,出力制御付き遠隔監視装置も義務化になっています。
売電単価が32円以上の物件は,改正FIT法に対応した発電所であるか購入時にしっかりと検討してください。
個人的なは18円,21円の物件が比較的新しく,改正FIT法に対応しているのでおすすめです。
その他にもパネルの積み立て費用が必要になったり,事業者負担のリスクが増えています。
他にもデメリットはありますが,主なものをまとめました。
☑ FIT期間が短い
☑ 機器等が古い
☑ 改正FIT法に未対応
物件の決め方
それでも新築太陽光が少なくなるにつれて中古太陽光の取引がますますふえていきます。
中古太陽光は不動産取引のように,路線価,固定資産税評価額などの基準や宅建業法上の仲介取引の手数料などの規定はまだ整備されていません。
私が実際に査定して,業界の大まかな査定基準があるのかなと思うので参考にしてください。
基準価格
メリット・デメリットを比較検討して,物件を選ぶポイントをまとめてみます。
利回り10%でも,FIT期間が19年ある物件と10年しかない物件では総収入が大きくことなります。
基準価格=(240-経過期間ヶ月) / 12 ÷2
例えば,年間売電収入が180万円(税込み)でFIT期間が2年6か月(30か月)経過の場合は,購入してもよい基準価格は
基準価格は,180×(240-30)/12÷2=1,575万円
付属品や税金の確認10つ
売買価格にどこまでのオプションがついているか確認してください。どこまで設備が付いているか確認してください。
特にメンテナンスが年間20万円以上も必要で紐づけかどうか解除できるか聞くことが大切です。
☑ 仲介手数料の有無
☑ フェンス,標識の有無
☑ 遠隔監視装置の有無
☑ 防草シートの有無
☑ メンテナンス履歴の有無
☑ メンテナンスはひも付きかどうか
☑ 機器の保証等の有無
☑ 自宅からの距離
☑ 融資の有無
☑ 土地の固定資産税
☑ 売主の売却理由
これだけは最低限確認すれば,中古太陽光の売買で成功します。
付属品がどの程度ついているか,また維持費がどのくらい必要か業者に問い合わせして確認することが大切です。
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