教育公務員(学校の先生)は長距離通勤を選んだり,または余儀なくされたりすることが多いです。私の周りにも,広範囲から通っている先生方が多いこと。いつもお疲れ様です。
理由は,県立の職員は転勤の範囲が全県に及ぶから。
地域住民の目を気にして,あえて自分の学区に住みたくないから。
私も,かつては片道 70km 以上も車で通勤していました。新車のプリウスの査定が過走行ですぐに下がりました。
長距離通勤は,体力的にとてもきついし,何より実質手取りが目減りするのは体験として分かっていました。
先日,仲の良い同僚Aさんからこんな相談を受けました。
毎日,通勤だけで大変ですね。
通勤手当をもらっているのに全然手元に全然残らないです。
全くその通りですよ。通勤手当は「課税所得」も含まれるし,「標準報酬月額」も上がりますから。
えつ,「課税所得」,「標準報酬月額」何それ??
少し話をしただけなのに,こいつは詳しいなということがすぐに悟られてしまいました笑。
私がFPの資格を持っているのも知っています。1時間以上も相談にのることにしました。
長距離通勤で手取りが減る原因
まずは,長距離通勤で手取りが減る原因を考えます。
Aさんの通勤について
A さんがどのように通勤しているかをまずはヒアリングをしました。
片道約 100 km の通勤。
自家用車を利用。
高速道路を利用。
通勤手当は,ガソリン代は 55,100円。高速料金は,52,500円だとします。
合計 107,100円
基本給,地域手当,調整額,特別手当等 480,000円。
給与明細を見たわけではないので,あくまで推定です。
課税所得の増加
所得税は通常はもうけに対して課税されます。自動車通勤の場合,通勤手当は距離に応じて一定額までは「非課税」で受け取ることができます。
国税庁に資料によると,
片道通勤距離 | 非課税限度額 |
---|---|
~2km | 全額課税 |
2~10 km | 4,200円 |
10 ~ 15km | 7,100円 |
15 ~ 25km | 12,900円 |
25 ~ 35km | 18,700円 |
35 ~ 45km | 24,400円 |
45 ~ 55km | 28,800円 |
55 km~ | 31,600円 |
上の表の通り国税庁では,通勤距離片道55km 以上までしか規定していません。県の職員で実際に55km 以上の距離を通勤している人は少なくないです。
場合によっては,高速道路の料金も課税所得になる可能性もあります。
A さんの通勤距離は100km で,マイカー通勤で 52,500円の支給を受けています。
55,100円ー31,600円 = 23,500円
毎月,少なくとも23,500円も課税所得を受け取っていることになります。とても大変です。
併せて住民税も一律10%の徴収なので,翌年の住民税も上がります。
ガソリン代の持ち出し
高速道路は,一般道路に比べて燃費が悪くなります。おまけに最近はガソリン価格も高騰しています。
1か月にどのくらいガソリン代が必要になるか試算してみます。
レギュラー価格は1リットルあたり,170円。燃費は17 km / L
1km 車を動かすのに,10円必要になります。
片道100kmを月に22日勤務するので,1か月のガソリン代は
10×100×2×22=44,000円
月間約5000kmも走行するので,維持費が高いそうです。タイヤの消耗も激しいし,オイル交換は毎月必要ですね。
少なくとも,月に約5000円は必要です。
走行距離が長いと,必然的に自己のリスクも増えます。また,自動車保険料も高くなります。
ETC の時間制約
私も有料道路通勤経験者ですが,この制約が地味にきついです。通勤手当は,ETC割引後の料金しか出ません。
ETC 割引が適用される時間帯は。
朝6:00~9:00
夕方17:00~20:00
です。有給休暇をとったり,夜遅くまで仕事が立て込んだりしたら,上記の時間帯でゲートを通ることができません。
その分は自腹になります。
過走行による車の価値の減少
これが長距離通勤の最大のデメリットです。それは車の価値が急激に下がることです。
A さんは200万円以上もする新車を購入しました。
車は10万キロ以上走行すると,価値が急激に落ちます。通勤で年間5万キロも走行していると,3年ごとに車を交換する必要があります。
標準報酬月額の等級が上がる
標準報酬月額とは,いわゆる社会保険料です。通勤手当,住宅手当,扶養手当などずべての給料が標準報酬月額に含まれます。
✅ 厚生年金
✅ 医療保険
✅ 介護保険(40歳~)
✅ 退職年金
✅ 雇用保険(※公務員はなし)
合計して,おおよそ給料の15%も社会保険料として徴収されています。
簡単に言うと,通勤手当を12万円もらったとしても,18,000円は社会保険料として徴収されています。
手取りが減る原因
最後に長距離通勤で実質の手取りが減る理由をまとめます。心身ともに疲れます。
さまざまな事情はありますが,マイカーによる長距離通勤の弊害をまとめてみました。
✅ 課税所得で所得税が上がる(約20%)
✅ 課税所得で住民税も上がる(10%)
✅ 通勤の持ち出しも発生。
✅ 社会保険料も上がる。(約15%)
長距離通勤の対策
それでは,少しでも手取りが増える方法を考えてみます。
通勤手段を変更する
自家用車での通勤の非課税の上限枠は31,600円でした。
公共交通機関の非課税の上限はもっと高いです。
しかも最近になって,非課税の上限が10万円から15万円までに引き上げられました。
A さんの場合は,自家用車から新幹線で通勤すると3か月定期券約209,400円です。1か月あたり,約70,000円です。
標準報酬月額も下がるので,社会保険料も安くなります。
もちろんデメリットもあります。
仕事は公共交通機関の時間に合わせないといけないです。地方では新幹線の本数も多くないので,これはかなりのストレスになります。
また,駅から職場までが遠いので時間がかかったり,雨の日などは大変です。
燃費の良い中古車
新車が3年間で過走行になり,査定価格がなくなるのはお財布に痛い。発想を変えて,高年式で過走行の中古車を50〜100万円程度で購入するのがおすすめです。
また,過走行になっても査定の落ちにくい車を選ぶのも一つです。
通勤距離が長いため,5年落ちの50万円程度の車をずっと乗り継ぐ人もいます。とても考えられているなと感心します。
節税をする
サラリーマンでも少なからず節税をすることができます。
A さんは年収ベースで800万円以上あるので,所得税も多く支払っています。少しでも課税所得を減らしてほしいです。
代表的なものは,生命保険料控除,ふるさと納税,住宅ローン減税,ideco などあります。
また,上級者は不動産投資による損益通算もあります。
効果的な節税
それでは個々の事案を見ていきます。
生命保険料控除
生命保険料は生命保険,介護医療,個人年金の3種類あります。最大控除額はそれぞれ4万円で,合計12万円です。
サラリーマンが利用できる数少ない節税なので,利用してほしいです。
ふるさと納税
これは厳密には節税ではありません。本来自分が住んでいる自治体(住民票のある自治体)で支払うべき住民税の一部を別の自治体に収めることができる制度です。
その代わりに,返礼品を受け取ることができます。最近は,PayPay商品券などを返礼品とする自治体も登場しました。非常に換金性が高く使い勝手がいいですね(^^♪
また,ふるさと納税の返礼品をお中元やお歳暮に利用する人もいるそうです。
寄付金控除が使えて,一定額までは自己負担2,000円ですみます。
個人的には,最大控除額の範囲内であれば「やらない理由はない!!」です。
ふるさと納税セミナーでふるさと納税の仕組み詳しく解説してくれます。
標準報酬月額が上がると
標準報酬月額があがると,必ずしもデメリットばかりではありません。
公的年金の増加
厚生年金の受け取り額は,標準報酬月額に基づいて計算されます。標準報酬月額が増加すると,社会保険料負担は大きくなりますが将来受け取る年金も多くなります。
各種給付の増加
もう一つメリットがあります。万が一のときに標準報酬月額が多いと得をします。
子どもが産まれて育児休業を取るときは,育児休業給付金。
失業をして,仕事を探すまでの雇用保険からの失業給付金。
病気やケガをして仕事を休んだ時の,傷病手当金。
これらはすべて標準報酬月額も基に計算して,支給されます。
標準報酬月額が多いと,万が一のときのセーフティネットになっています。
私たちは,転勤をコントロールすることはできません。給与明細をただ眺めているだけでは解決しません。どんな状況であれ,お金の仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。
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